身辺雑記

 どうもブログの過去記事を見ると、まだ立ち直れていなかった時期から更新が途絶えていたのでなるたけ簡潔に。昨年大学院をドロップアウトしてまた今年再上京してきてから、しばらくはやはり苦しかった。何も心の整理はついていなかったし、無謀にも断薬なんかを試みて1週間寝込んだりもした。それからいくらかして、ここ5年の間に起きた種々の個人的な事件に対し、とりあえずの折り合いをつけることができた。意外にも平静を取り戻し、かつてないほどにアタマがクリアになった。些細なことでは動じなくなり、気分の乱高下も収まり、徐々に減薬をしながら院生生活を送っている。

 

 そうして戻ってこれたからか、四半世紀近く生きて初めて恋人ができた。4月の頭のことなので、1ヶ月経った。彼女とはなんだかんだで長い付き合いだ。確か2年前のGWだっただろうか。GW中に絶対に自殺をすると宣言しているTwitterアカウントを見つけた。その時の僕は必至にDMを送り、少しやり取りをし、僕のDMに効果があったかはわからないが、思いとどまってくれた。それからは、頻々にやり取りをする、ある種の戦友のような間柄だったように思える。僕は勝手に横恋慕していた気もしないでもないが、取り合ってもらえなかった。いろいろなことがあった。連絡を長く取っていなかった時期もある。しかし、彼女とのつながりはどうやったって切れなかった。

 

 今年の3月頃、僕が電子失踪をやめ、スマホの電源を入れてLINEを確認していたら、彼女から今生の別れのような長文メッセージが届いていて、慌てて通話をかけた。僕の昨年の憔悴具合や、過去の自殺未遂、見舞われた様々な事件などを知っていれば、当然の心配だったと思う。その時の通話で、自分も大変だろうに、彼女は僕の話に優しく耳を傾けてくれた。ずっと孤独だった。一条の光が差したように思った。僕はまだ再上京の決心がつかず、名古屋の実家にいたし、彼女には交際相手がいた。それに、これまで恋愛や性愛を追求してきて、その結果としていつも虚しさを感じ、荒みきっていた。だから、恋愛感情は沸かなかった。

 

 再上京し、前に書いた通り、僕はようやっと新生した。友人の一人として、彼女と交際していくうち、少しずつ距離が狭まった。ある日彼女は突如として、交際相手と別れた。本当に驚いた。僕の知っていた過去の彼女は、流されやすいところがあり、自分から大きな決断することはないだろうと思っていたからだ。お互いに放蕩の限りを尽くした時期を知っていただけに、その覚醒(?)は瞠目に値した。僕はゲームのような恋愛には、ほとほと懲りていた。なので、「気持ちの整理がついたら、僕と真剣に付き合ってほしい」とアプローチした。元より、馬が合った。それに最早あきらめかけていた、生涯を共に歩みたいと思える唯一の人だった。僕はどうにも他人にはよく避けられた。さもありなんと思うところもないではなかったが、とても寂しかった。彼女はその中で一人だけ僕を尊重してくれた。良いところを見つけ、悪いところを許容してくれた。彼女といると心が安らいだ。心根がとても優しく愛らしかった。

 

 「返事は4月の下旬まで待ってほしい」と言われた。また、「自分から伝えさせてほしい」とも言われた。僕は彼女の意思を尊重しようと思った。多分彼女の中では、僕に惹かれるものはあるものの、お試し期間が欲しく、デートを何回か重ねた上で決心したかったんだと思う。初デートは水族館だった。二人で見たイルミネーションに包まれたイルカショーは、拷問されたって忘れないと思う。水族館から出た夜桜の下のベンチで、「今聞かせてほしい」と告げた。僕らは恋人になった。

 

 この一ヶ月を振り返ると、決して順風満帆とは言い切れなかったと思う。ものすごい勢いで互いの相手を想う気持ちは強くなっていったが、更生したとはいえ、トラブルメーカーのメンヘラカップルである。誤解やすれ違いもたくさんあった(だいたい僕が悪い)。僕はあまりに非モテ人生を歩みすぎたため、初めて嫉妬の感情をぶつけられ非常に当惑したりもした。実は昨日それで喧嘩もしたり(すぐに仲直りできて良かった)。手探りで二人の距離感と生活を作っていった。僕は相変わらず自信が持てずによく怒られる。彼女の類まれなる言語センスに較べ、僕は10年も文学なんて志しているにも関わらず、ありきたりで月並みな言葉でしか気持ちを伝えられない。いつも申し訳なく思う。それでもとても上手くいっている。凸凹な二人が補い合ってどうにかこうにか。なんだかんだで相性が良いんだと思う。彼女が代替不可能性を自分から言ってきた時には、ああもうこの人しかいない、大切にしようと固く決心した。ずっと僕が追い求めてきて、ついぞ手に入らなかった関係性だったからだ。窓際に飾ってある遊園地デートの時の写真を見ると、なんでもできる気持ちになれる。最近僕のことを、下の名前で呼んでくれるようになった。とてもじゃないが考えられなかった、大好きな人と愛し合えるという幸せに、まだまだ戸惑いは隠せないけれど、僕は彼女を一生愛し抜こうと思う。