真・厭世伝(一)
大成した者こそ、自伝を遺すべきであり、世に敗残したmobは静かに死にゆくべきである。まして、「自伝」とは何事か、他者が史料を駆使し、艱難辛苦の果てに書き上げる「伝記」こそ、その人物の偉大さを後世に知らしめる価値ある文献であり、自作自演的に、各々が書き殴っていちゃあ、世話がない。
だけれども、日本には、「私小説」という伝統があり(このジャンルにおける「私」即ち作者ではない)、欧米にも旧くから「告白小説」というものがあるのだから、そうめくじらたてるほどのことでもないように思う。
ようは、自伝なるものに誇張がなければ良いのだ。「我は天皇である」だとか、メサイア・コンプレックスのような誇大妄想さえなければ、それは、1個のニンゲンのレーゾン・テートルの発露として芸術足り得る。逆に、地に足ついていないものは、狂人の妄想の類いなのだから、すぐさま止すべきである。
私は天才だ。
おしまい。